日本のソウルフード「納豆」
皆さんは、納豆はお好きですか?
私たちの「食」の中で微生物の手助けによって作られる食べ物は沢山あります。
その中でもイメージしやすいのが「納豆」ではないでしょうか。
独特な風味が癖になるか苦手となるか。
好き嫌いのはっきりする味ですよね。
外国人に驚かれる日本食としても取り上げられる私たちのソウルフードですが、
これは微生物との共同作業で作られる発酵食品のひとつです。
昔の人々が、
「たまたまこうしたらそうなった」という成り行きで出来上がった食べ物なのかもしれません。
納豆と言えば、独特なあの”ネバネバ”。
納豆はどのようにして作られるのでしょうか?
納豆を作り出す「納豆菌」とは?
納豆は、大豆と納豆菌で作られます。
納豆菌は納豆の特徴であるネバネバや独特なニオイ、味をすべて作り出しています。
納豆菌は別名、「バチルス・サブティリス」と呼ばれる細菌の一種です。
蒸した大豆に納豆菌を吹き付けて、醗酵室で納豆菌の繁殖を促します。
菌を繁殖させるためには、体温より温かい40度前後の環境と、十分な酸素が必要です。
昔は納豆菌が繁殖するのに数日間かけて作り出しましたが、
現在では、人工的に納豆菌を培養することができる為、1日もかからないうちに納豆ができるようになりました。
ところで、納豆菌が増殖する間に他の雑菌も増殖してしまうのでは・・・?
そう思うかもしれません。
しかし、納豆菌の特徴を生かした培養方法により、納豆菌だけ増殖することができるのです!
納豆菌の特徴は、「芽胞」を形成することで熱さに耐えることができます。
その為、煮豆が30~45度の温かさを保っている間に醗酵室に入れて納豆菌を繁殖させることで、他の菌は熱さに耐えられず、納豆菌だけが繁殖するのです。
これは糸引き納豆の場合になりますが、実は納豆の種類によっては、「カビ」を使って作り出すのもあります。
「寺納豆」と呼ばれる納豆がそのひとつで、蒸した大豆に小麦粉を加え、コウジカビを使って豆麹を作り出して発酵しています。
さらにそこに塩水で漬けて熟成させて作るので、別名「塩辛納豆」とも呼ばれています。
納豆菌はどこにいるの?
納豆は納豆菌がないと作られないのはわかりましたが、どこに存在する菌なのでしょうか?
実は、納豆菌は私たちの身近な所にいます。
例えば土壌の中や、空気中、枯れ草などに存在しています。
「米を収穫し終えた稲の藁」もそのひとつです。
納豆の起源には様々な説がありますが、
一説によると、大昔の中国の人が、煮豆を保存するため米を収穫し終えた稲の藁に包んで保存したことで、たまたま糸を引いた納豆ができたそうです。
現代では衛生面上、藁を使用することは減りました。
因みに、納豆といえばネバネバしているものが特徴ですが、これも納豆菌が作り出しているものです。
納豆菌が作り出した「グルタミン酸」と、「フルクタン」と呼ばれる果糖が鎖状につながって大豆を覆っているのがネバネバの正体です。
グルタミン酸は納豆のうま味を作っている成分でもあります。
糸引き納豆でよく小粒タイプを目にしますが、これは小粒納豆の方が表面積が多い為、グルタミン酸が増えることで、旨味アップに繋がっています。
また、グルタミン酸は大豆のタンパク質を分解して作られている為、消化吸収されやすくなります。
通常の菌では腸に届く前に胃酸によって死滅してしまいますが、納豆菌は胃酸に強く、生きたまま腸に届きやすいのも特徴です。
そして乳酸菌やビフィズス菌のエサになり、腸内環境の改善に繋がります。
また「ナットウキナーゼ」と呼ばれる酵素を含んでいます。
血栓を溶かす効果があり、脳梗塞などの生活習慣病予防にもつながります。
美容面でも「イソフラボン」と呼ばれる栄養はポリフェノールの一種で、美肌効果をもたらしてくれます。これは女性ホルモンと似た働きをするので、女性には大変嬉しいですね。
他にも納豆菌はビタミンやカルシウムなどの栄養素が沢山含まれていることから、優良食品と呼ばれているのです。
昔の人々が偶然にも作り上げた納豆は、
スーパーフードとして今もなおどこかの食卓で活躍しているのです。