“発酵”と”腐敗”の違いは何?
今まで”発酵”で出来上がる食品を取り上げてきました。
それらの作り方を見てみると、発酵させる為に放置していることが多く見受けられます。
放置するということは腐ってるんじゃ・・・
そもそも“発酵”と”腐敗”の違いは、何が違うのでしょうか?
簡単に言えば、
目指したものに向かっていれば「発酵」、
それ以外の変化があったり、アンモニアなどの毒性を大量に発生した場合に「腐敗」
ということになります。
“発酵”は今までにお伝えしてきた通り、人間の食品を作る上で必要な工程であり、
“腐敗”は微生物が様々な成分で増殖し、変化によって食べられなくなってしまった場合に適用されるワードです。
食品には、人間と同様、微生物が生きる為のタンパク質やビタミンなどの成分を含んでいます。
食品を放置することによって、人が食べるよりも先に微生物が成分を食べ、栄養にした結果、臭いや色味などの変化が起こり、「腐敗」となります。
どちらも同じようではありますが、
発酵と腐敗は紙一重なのです。
食品の腐敗も微生物が関係している!
特に、人間が腐敗と感じるのは、”悪臭”が大きく関わってきます。
「臭い!」と思った食品の中はどうなっているのでしょうか?
悪臭の原因は微生物によるものです。
例えば、肉・魚・乳などからできた食品。
これらに含まれるタンパク質は、微生物が増殖する為に必要な栄養で、「プロテアーゼ」という微生物によってアミノ酸へと分解されます。
更に、アンモニアや炭酸ガスなどに分解されます。
これらがニオイの”腐敗臭”とされる原因なのです。
人間は微生物の働きによって起こるニオイによって、”腐敗”と決めつけることが多いようですが、ニオイがあっても美味しい食べ物を私たちは生み出しています。
その代表格が「クサヤ」です。
クサヤは発酵?腐敗?
独特なニオイを放つクサヤ。
お世辞でも良いニオイとは言えませんよね。
でも食べると癖になるような美味しさです。
クサヤの語源も、「臭魚」から転じてつけられた名前です。
ではこの食品は腐敗ではないのでしょうか?
結論から言うと、クサヤは発酵食品です。
また、微量のアンモニアを利用して独特なニオイが作り出されます。
ですが食品自体に毒性はない為、美味しく食べられるのです。
簡単にクサヤの作り方としては、
アジやトビウオなどの魚を切り開き、クサヤ液に一晩寝かせます。
最後は干して完成です。
ニオイを我慢すれば作り方は比較的単純かもしれませんが、
大切なポイントは「クサヤ液」です。
クサヤ液とは一体何なのでしょうか?
クサヤ液の中には、「コリネバクテリウム」と呼ばれるクサヤ菌が抗菌の役割を持っています。
塩分にも強いために、塩分濃度が高めなクサヤ液でも耐えることができ、魚の腐敗を防止します。
これも、微生物のことが知られていなかった昔の人々が偶然にも作り上げた産物なのです。
その昔、冷蔵庫というものがこの世にない時代にさかのぼります。
釣った魚を保存するために、塩水に浸して腐敗を防いでいました。
その頃は塩が大変貴重であった為、その塩水を使い回していたのです。
やがて、使いまわしていた塩水に魚のエキスが溜まりました。
微生物によって悪臭を放つこのエキスこそが、クサヤ液の発端なのです!
クサヤ液は継ぎ足しで作られているため、乳酸発酵の進んだ食品で、
他の干物よりも保存に優れているという特徴があります。
クサヤはおつまみにもピッタリな一品ですが、ナイアシンも含まれるので次の日まで酔いを残さない手助けをしてくれます。
また通常の魚を食べるよりもカルシウムが沢山含まれる為、骨の生成にも優れているので子供から大人まで体に良い効果をもたらしてくれます。
とある島では、風邪をひいたとき、下痢のとき、疲れたときなどの体調不良に、クサヤ汁を飲んで治癒するのだそうです。
それは腸を整える効果があるからです。
今や腐敗しやすい物は冷蔵庫へしまうのが当たり前ですが、
昔の塩水に漬けるという知恵ものもさすがのものですね。