鰹節もカビのおかげ!
清酒を作る際には「麹菌」というカビを利用しているということを過去にお話しました。
カビにも様々な種類があるのですが、アジアで作られるお酒はカビが役に立っています。
お酒だけでなく、ダシを取るのに欠かせない「鰹節」もその一品です。
鰹節の作り方をご存知でしょうか?
今のご時世、めんつゆなどの既にダシのとれた調味料のおかげで料理もラクになり鰹節そのものを見る機会も減りました。
鰹節のダシを取るところから御汁を作る家庭があったら素敵だと感じてしまいます。
作り方なんて、「カツオを干して乾燥させておけば出来上がるんじゃ・・・」とか思っていませんか!?
それは大間違いです!!
本当の鰹節は、何ヶ月もの歳月をかけて出来上がるお品なのです!
さらに、鰹節を作る為には「カビ」が重宝されています。
ということで、まずは鰹節ができるまでの工程を簡単にご紹介します。
鰹節ができるまで~
まず、漁獲された鰹節の選別から始まります。
脂身が少なく新鮮過ぎない程度のカツオを選別し、頭や内臓を取っていきます。
鰹節にするための丁度よいサイズに切った後、煮熟していきます。
煮熟は100度未満の温度を保ちながら漬けていき、その後に手作業で骨を抜いていきます。
そして、水分を抜くために“焙乾”と言って、いぶして乾燥させる作業を何度も何度も行います。
途中、身割れを防ぐために、形を整えていきます。
ここからカビの登場です。
カビを付着させるための段階として、焙乾後は周りを削り、きれいに整えていきます。
そして、カビを植え付けるのです。
カビを増やす室で1~2週間放置し、2日程日に干します。
これが1番カビです。
干すときには付着したカビをブラシで払い落とします。
この作業を数回繰り返し、2番カビ、3番カビと、繰り返しつけていきます。
カビをつけるたびに茶色へと変化していきます。
こうしてカチカチの鰹節が出来上がりです!
これでも簡単にご説明しましたが、出来上がるまでに過程が多く、職人の経験が必要とされる大変な技術です。
ではなぜ、わざわざ人の手でカビを付着させる工程があるのでしょうか?
なぜ鰹節はカビが必要?栄養はあるの?
なぜカビを付着させるのかというと、理由は沢山あります。
主な理由の一つは、鰹節の乾燥を進めるためです。
カビが成長するために鰹節の水分を均等に吸収してくれるので、乾燥しやすくなるのです。
そして乾燥することで、魚の独特な生臭さを軽減してくれます。
そして、カビが周りに覆われることで、他の有害な細菌の働きを抑えることができるのです。
また、カビは余分な脂肪分を分解する力をもっており、「グルタミン酸」などのうまみ成分を作り出します。
その結果、風味の良いきれいなダシがとれるのです。
もちろん、保存にも優れます。
カビの中でも、「ユーロチウム」というカビが主に使われています。
カビは基本的に湿った場所を好むイメージを持ちますが、このカビは麹カビの一種で、乾燥している場所でも繁殖できるのが特徴です。
麹カビはたんぱく質を分解し、酵素を作り出す為、味噌や醤油の醸造工程にも使われるほどの優れものなのです。
正しい知識を持ってすれば、カビも人の味方になることがあるのです。
そして、鰹節は豊富な栄養を兼ね備えています。
まず、カルシウムは勿論、
体の成長に欠かせないタンパク質、
中性脂肪を減らしたり記憶力を上げてくれるDHA、
精神を安定させるトリプトファン(必須アミノ酸)、
免疫を高めるビタミンEなどあります。
学生であれば、体の成長や学習能力を高めてくれますし、
大人であれば、睡眠の質を高め、代謝を良くする働きを持っているので、良い事尽くしです!
因みに、鰹節には加工工程によって呼び名が変わります。
カビ付けをする前の焙乾でできたものは「荒節」と呼びます。
カビをつける工程は行わない為、乾燥度が低く、鰹独特の匂いが強いのが特徴です。
これまでお話しした、カビ付けを何度も繰り返しものは「本枯節」と呼びます。
カビ付けの工程をたくさん挟む分、風味・価格において荒節よりも高級になるのです。
鰹節は本来主役になることはありませんが、和食をおいしくさせていたのは鰹節といっても過言ではありません。
これから和食を食べる際は、鰹節の風味も堪能してみては?